日々ぴこぴこ

TESとかFalloutとか、思ったことを淡々と。

上級王・首長・ムート

シロディールでの各地方の支配者は「伯爵」、英語でcount、あるいはearlと呼ばれる。日本の爵位制度では、公候伯子男なんていって、明治になって貴族や大名家の格式で選ばれて任命されたので、土地の支配者という位置づけではなかったけれど、ヨーロッパの爵位は土地の支配者の意味合いを持つ。

例えば、伯爵は一定の地域を支配する人のことで、ドイツなどでは「辺境伯」という地位が任命され、広範囲な未開拓地の開拓権も含めて付与される。

領地を奪うということは、伯爵位を奪うことでもあって、これは日本でいえば守護や国守のような感じ。

一定の伯爵位を集積したものが公爵。日本語での公爵は1つしかないけれど、ヨーロッパでは二種類あって、王族も、ある程度の広範囲な土地所有権を有する爵位も、公爵と訳すようになってしまってるので、ややこしい。

 

シロディールでは、シロディール王はいない。皇帝がこれを担う。インペリアルシティ周囲が皇帝の直轄地であり、コロールを首府とするコロディアなどは、伯爵が管理権を相続し、基本的には世襲していた。

 

スカイリムでは、各ホールド(領域)を支配する人物としてヤールがいる。彼らは日本語で「首長」と呼ばれるが、実は英語のJarl(ヤール)とイギリスでの伯爵を意味するearlは同じ語源で、ともに「ヤール」である。首長というより、伯爵というニュアンスが近い。つまり、シロディールの伯爵とスカイリムの首長は、権限や地位は殆ど同じということになる。

 

スカイリムを内戦に陥らせた、上級王・トリグとウインドヘルム首長・ウルフリックの「決闘」。上級王トリグはソリチュードのヤール世襲家で、彼が選出される際は上級王選出の会議「ムート」は開かれなかったらしい。

 

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この理由として、上級王は基本的には世襲制で、その血統が絶えたり、血統に疑問が生じたときのみ、ムートが開かれる原則だったからという。

トリグが死没した際、ムートが開かれて当然であったが、なにせ上級王を殺したのがムートに出るウインドヘルムの首長であったから、ムートが開かれることがなかった。これが、スカイリム内乱を悪化させる原因の1つとなる。

 

ところで、この上級王。英語では「high king」と呼ぶ。そのまま上級王となるが、これは「上王」とか「高王」とも表現できる。王たちの中でも、位置づけとして上位にあるので上級王。

王が林立するというのは日本では少し考えにくいけれど、現代における「国」と、古代から中世における「クニ」というものは領域も形式も格式も、全く異なる。イギリス1つとってみても、イングランドウェールズスコットランド、そしてアイルランドのごく一部という四つの大きな国家の統合体であり、しかし一方でスコットランドウェールズアイルランドは被征服国家だから自主独立の気風が強い。

中でもスコットランドアイルランドは、かつてさらに多くの小国家が林立していた。スコットランド地方、アイルランド地方にも、王の中でも上級の王が必要だったのは、イングランドなど、早くに近代国家的な統合を果たした征服者から、自国を護るための必要手段だったのであって、これはスカイリムに似ていると思う。

 

スカイリムのメインストーリーの1つとして、内戦がある。

僕も二派、それぞれの歴史を経験したけれど、どちらもしっくりこなかったので、それからは内戦クエストを進める気がしなくなった。たぶん、TES6の歴史では、一度どちらかの派閥が勝利したとしても、その後は帝国の干渉によって、みたいな歴史の整理統合が行われるのだろう。ストームクロークが勝利しても、北国の隔離されたスカイリムが独立することに意味はない。帝国軍が勝利しても、ノルドに根付いた帝国への反感が消え去ることはない。いずれにせよ、ノルドのマザーランド、スカイリムは根底から、帝国の一属州の地位を喪失しているのだ。