日々ぴこぴこ

TESとかFalloutとか、思ったことを淡々と。

吟遊詩人

Skyrimでは、Oblivionでは全く登場しなかった吟遊詩人が登場する。

吟遊詩人という「文化」は、日本でいえば琵琶法師になるのだろうか。

 

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現在では考えられないことだが、中世ヨーロッパの識字率は極めて低かった。

その原因は、様々だ。ひとつに、ほぼ体制的であったキリスト教の、中でもカトリックが、聖書を難解なラテン語でしか配布させなかったことに原因がある。

ゲルマン民族との融合によって、現在のフランス語やドイツ語、英語といった言語の古語は成立していたが、ラテン語はいわばローマを起源とする言語であり、カトリック本部はこの原初言語ともいうべき、ラテン語による聖書の製造と頒布しか許さなかった。確かに、言語が変わるたびに行われる翻訳が、必ずしも精密なものであるとは限らないのだが、結果としてこれが、宗教を取り巻く様々な事柄、例えば文化や知識の、民衆への広まりを阻害していたことは紛れもない事実だ。

 

一方、中世ヨーロッパといえば騎士文化だ。騎士は文盲たれ、騎士は馬上槍で語らうものであるという文化のため、明確な文学的文化はどうしても、形成されづらい。

 

しかし、古代から伝わる様々な神話と、騎士文化などが融合することで、様々な文学が成立するのも事実で、人々はいつの時代も、幻想的で魅力的な未知の世界、あるいは空想に身をゆだねるものである。

吟遊詩人は、そうした世界において、唯一ともいえる娯楽として普及する。

 

また、中世ヨーロッパではまともな飲み物が「酒」しかなかったことも原因だろう。

水は腐敗しやすく、また実際疫病の原因ともなっていた。人々は水を飲むよりも、酒を頻繁に飲んだ。そのため、中世ヨーロッパの人々は常にほろ酔いだったという研究結果もある。教会では赤いワインをキリストの血として頻繁に飲んだし、ビールなどの酒文化が発展するのも当然だった。大航海時代によって、紅茶やコーヒーが流入するまで、中世ヨーロッパの人々は腐敗しているのを承知で飲む水か、アルコールを呑むしか喉の渇きを潤す方法がなかったわけだ。

 

吟遊詩人の語らう異国の、あるいは幻想的な夢の世界を、日常的(ほぼ24時間にわったって)飲み続ける人々が聞けば、さぞ素晴らしい夢を見ることができただろう。

 

スカイリムに書店がないことを指摘し、Modで書店を導入する人も多いが、それは文化の違いだと僕は思う。シロディールの人々の識字率は高かった。それは様々なギルドと、多種多様な信仰が帝国によって保障されていることから、人々の文明度合いも発展する素地があった。

一方、スカイリムはノルドの「文盲こそ誇り」というべき、まるでフランク騎士のような文化の中では、おそらく本を読んでいるだけで馬鹿にされるのだろう。人々は本を読むより、剣を抜き、鎧を身に着けることを名誉とする。

こういうスカイリムの文化だからこそ、吟遊詩人の文化はすたれないのだろう。