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日々ぴこぴこ

TESとかFalloutとか、思ったことを淡々と。

たまにはリアルを。

リアル生活ネタ

僕はいま、職人さんたちに支えられている現場で働いている。

僕は単なる、一会社員にすぎない。でも経営者や、応援に来てくれる人たちは、みんな個人事業主であり、職人だ。経歴10年以上が基本で、僕のようにペーペーの素人は皆無だ。

 

仕事は朝から始まることもあれば、夜に始まることもある。

最近は夜勤続きだが、こういう業界だと2月から4月は夜勤が一般的だ。

みんな寝静まったころ、僕たちは様々な人たちのために、働いている。

 

職人さんは、基本、孤独だ。

僕の会社には、10人くらいの職人さんが所属している。しかし、腕のいい職人さんほど、ほかの会社からも引っ張りだこだ。

この一週間で出会った職人さんは、みな、様々な会社から毎日のように「来てくれー」と電話を受けるほどの人気者だ。実際働いてみると、丁寧だし早いし、考え方もスマートだ。無駄がない。仕事を高速に進めながら、同時に道具を片付けていて、掃除や片付けが仕事の僕の出る幕もない。

 

一方、最近ずっとうちの会社に所属して、ほぼ常駐のような職人さんがいる。彼は腕はいいが、掃除がからっきしだ。言葉も荒いし、短気だ。僕はこの職人さんが、正直きらいだ。

彼は頻繁に、社長に僕の技量の無さ、能力の無さを告げ口している。そして、現場から帰ってくると、社長から「あの職人さんから聞いたけど」とお説教タイムが始まる。

 

全くの事実無根ではない。たしかに、そういうミスはした。しかし、そこまで怒られるほどのミスではなかったし、実際、現場では様々な職人さんから叱られることはなかった。常駐の職人さんが話を盛っているんだな、と思ってしまう。

この人は、結構誇大表現が多い。自分は人気者で仕事が多い、正直この会社以外からも呼ばれている。でも、ほかの職人さんに聞くと、「昔の同僚から仕事を融通してもらっているだけ」「営業してほかの仕事先を確保するよう、説得しているけれど、お前の会社からしか呼ばれない」と聞いた。まあ、こういう人なら仕方ないな。

 

でも、この職人さんを恨んだり、憎むほどではない。

彼は彼なりに、僕に独り立ちしてほしくないのだろう。

僕の職種だと、場合によっては一人でも現場は回る。もし僕が独り立ちしたら、仕事が少ない時期にこの職人さんは切られてしまう。

職人さんの世界は孤独だ。どんなにいい人でも、仕事を得られるかどうかは、日ごろの営業力にかかっている。これまで、僕が入社するまで、僕の会社の仕事を専門に受注して、安定していた彼は、僕の入社によって収入源を失いかねない、危機的状況にあるのだ。

だから、彼は僕に対して、独り立ちしないよう願っているに違いない、そう思う。

 

こういう考えに至ったのは、違う職人さんと働いていたこの一週間だった。

職人さんだから、言葉はたいていぶっきらぼうだし、荒いけれど、どこか愛情を感じる。しっかり怒らないと本人がけがをする。そういうことを説明してくれる。

「ケガをしても、だれも得をしない。ケガをしないように怒るけれど、それはだれも損しない」

初老の職人さんがそういったとき、思わず泣きそうになった。この人の言葉には、愛情を感じる。

常駐職人さんは、そういう愛情が全く感じられない。むしろ、僕のことが邪魔なんだろう。でも、それは彼が選んだ人生なのだ。

 

正直、この一週間は、いろいろ悩んでいた。

毎日のように、常駐職人さんにはからかわれる。告げ口される。社長からは説教される。もちろん、反論はできない。反論するほど、まだ僕は成長していない。

もしかしたら、この世界に来たのは間違いだったのかもしれない。僕には合わない世界に来てしまったのだろうか、そんなことばかり考えていた。

しかし、昨日まで一緒に働いてくれた、様々な職人さんからいただいた言葉は、「がんばろう」と思わせてくれるものばかりだった。言葉だけじゃない。片付けながら進め、しかもすべての作業が丁寧で迅速な姿、いわば「職人の背中」に学んだことの多さは、計り知れない。

僕は最低でも、2年ここで頑張ろうと思う。心は頻繁に折れるし、いやになるし、物にあたるかもしれないし、ゲームとかの仮想世界に逃亡することもあるだろうけれど、がんばっていれば、この一週間に出会った様々な職人さんのような、すばらしい人たちに会えるだろう。

そして、独立することを目標にしよう。そう思った。会社というのは、結局のところ、創業者の理想であって、社員の理想なんてどうでもいいんだ。僕には、僕の理想とする会社像があり、幸い、僕たちの業界での独立は、敷居が低い話だ。

 

そう思わせてくれた、いわば、僕の心を奮い立たせてくれる人たちとの出会いがあった、一週間だった。